「自分にはコードが書けない」と思っていた筆者が、AIエージェントを動かすまで

結論から言います。コードはほぼ書いていません。

筆者は金融業界に勤める非エンジニアです。プログラミングの経験はゼロに近く、Pythonという言葉を聞いても「蛇?」と思うレベルでした。それでも、GA4(Googleアナリティクス4)のデータを自動で取得し、Claude(Anthropic社のAI)に分析させ、WordPressに記事の下書きを投稿するまでの一連の流れを、AIエージェントとして自作することができました。

この記事では、その全11ステップを実録として公開します。徳島をはじめとする地方の中小企業経営者やスタッフの方が「自分たちでもできるかもしれない」と感じてもらえることを目標に書きました。難しい専門用語は極力避け、なぜそのステップが必要なのかの「意味」も一緒に説明します。

そもそも「AIエージェント」とは何か

AIエージェントとは、複数のツールやサービスを横断して、自律的にタスクをこなすAIの仕組みのことです。単に「質問に答えるAI」ではなく、「データを取ってきて→考えて→別のサービスに書き込む」という一連の行動を自分で判断しながら実行します。

総務省の「令和6年版 情報通信白書」では、生成AIの業務活用が急速に拡大しており、単純な質問応答から「エージェント型」への移行が次のフェーズと位置づけられています。大企業だけの話ではなく、中小企業でも低コストで導入できる環境が整いつつあると同白書は指摘しています。

今回筆者が作ったのは、次のような流れで動くエージェントです。

  • GA4からサイトのアクセスデータを取得する
  • そのデータをClaudeに渡して分析・考察文を生成させる
  • 生成されたテキストをWordPressの下書きとして自動投稿する

毎週手作業でやっていたレポート作成が、ボタン一つ(正確にはスクリプトを実行するだけ)で終わるようになりました。

AIエージェント自作・全11ステップの全体像

全体の流れをまず俯瞰してください。大きく3つのブロックに分かれます。

  • 準備ブロック(Step 1〜3):環境と権限の整備
  • データ取得ブロック(Step 4〜6):GA4からデータを引き出す
  • AI処理&投稿ブロック(Step 7〜11):ClaudeとWordPressを連携させる

Step 1:Googleアカウントの準備とGA4プロパティの確認

大前提として、GA4が導入済みのサイトが必要です。まだの方はGoogleアナリティクス公式のセットアップガイドを参照してください。今回は既にGA4が動いている前提で進めます。

Step 2:Google Cloud Projectの作成とAPIの有効化

GA4のデータをプログラムから取得するには、Google Cloud Platform(GCP)でプロジェクトを作り、「Google Analytics Data API」を有効にする必要があります。GCPのコンソールは英語表示ですが、Claudeに画面のスクリーンショットを貼り付けて「次に何をクリックすればいいか教えて」と聞きながら進めれば問題ありませんでした。

Step 3:サービスアカウントの作成とGA4への権限付与

プログラムがGA4にアクセスするための「鍵」を作るステップです。GCPで「サービスアカウント」を作成し、JSONキーファイルをダウンロードします。そのサービスアカウントのメールアドレスをGA4の管理画面でユーザーとして追加(閲覧権限でOK)するだけです。このステップが一番つまずきやすいですが、手順さえ分かれば15分以内に完了します。

Step 4:Python環境のセットアップ(Anaconda推奨)

ここで初めてプログラミング環境が登場します。AnacondaというツールをPCにインストールすると、Pythonが使えるようになります。インストーラーをダウンロードして「次へ」を押し続けるだけで完了します。コマンドライン(黒い画面)への恐怖心を持つ方も多いですが、今回使う操作は3〜4種類のコマンドだけです。

Step 5:必要なライブラリのインストール

Pythonには「ライブラリ」と呼ばれる便利な追加機能があります。今回必要なのは主に以下の3つです。

  • google-analytics-data:GA4からデータを取得するため
  • anthropic:Claude APIを呼び出すため
  • python-wordpress-xmlrpc:WordPressに投稿するため

インストールはターミナルにpip install ライブラリ名と打つだけです。このコマンドもClaudeが教えてくれます。

Step 6:GA4からデータを取得するスクリプトを書く

いよいよコードを書くステップです。ただし、筆者はコードを一から書いていません。 Claudeに「GA4から先週のセッション数・ページビュー・直帰率を取得するPythonコードを書いて。サービスアカウントのJSONキーはこのパスにある」と伝えるだけで、動くコードを出力してくれました。エラーが出た場合もエラーメッセージをそのままClaudeに貼り付ければ、修正版を返してくれます。

Step 7:Claude APIキーの取得とコストの確認

AnthropicのWebサイトでアカウントを作り、APIキーを発行します。Claude APIは従量課金制で、今回の用途(週1回のレポート生成)では月500円以下に収まっています。経済産業省の「中小企業等のAI活用促進に関する調査研究」でも、生成AIの導入コストは年々低下しており、中小企業でも十分に活用できるコスト水準になっていることが示されています。

Step 8:GA4データをClaudeに渡して分析文を生成する

Step 6で取得したデータを文字列に整形し、Claudeへのプロンプト(指示文)に埋め込みます。プロンプトの例はこうです。「以下はGA4の先週のデータです。経営者向けに300字程度の分析コメントと、来週に向けた改善アクションを3つ提案してください。データ:{取得したデータ}」。このプロンプト設計こそが、AIエージェント自作における最大のクリエイティブポイントです。

Step 9:WordPressのXML-RPC設定を確認する

WordPressにはプログラムから投稿できる「XML-RPC」という機能があります。多くのホスティング環境では初期状態で有効になっていますが、セキュリティプラグインが無効化している場合もあります。設定を確認し、必要に応じて許可リストにスクリプトを実行するIPアドレスを追加します。

Step 10:Claudeの出力をWordPressに下書き投稿するスクリプトを書く

Step 8で生成されたテキストを、WordPressの下書きとして自動投稿するコードを書きます。投稿先のカテゴリやタグの指定、タイトルの自動生成なども同じスクリプト内でClaudeに任せています。ここでも筆者はコードを書いておらず、Claudeに「WordPressのXML-RPCを使って下書き投稿するコードを書いて」と依頼しました。

Step 11:全ステップを1つのスクリプトに統合してスケジュール実行する

Step 6〜10を1本のPythonスクリプトにまとめ、WindowsならタスクスケジューラやMacならcronを使って毎週月曜朝8時に自動実行するよう設定します。これで完全自動化の完成です。月曜の朝にWordPressを開くと、先週の分析レポートの下書きが出来上がっています。

実際にやってみて分かった3つのポイント

1. エラーを恐れる必要はない

筆者は構築中に20回以上エラーに遭遇しました。しかしすべてClaudeに相談して解決しています。エラーメッセージは「壊れた」サインではなく「何かが足りないよ」という情報提供です。

2. セキュリティの基本は押さえる

APIキーやJSONキーファイルは絶対にGitHubなどに公開しないこと。.envファイルに分離して管理する習慣をつけることが重要です。これもClaudeが教えてくれます。

3. 完璧を求めない、まず動かす

最初のバージョンは粗削りで構いません。「とりあえず動く」状態を作ることが最優先です。改善はその後いくらでもできます。

地方中小企業こそ、AIエージェント自作に挑戦してほしい理由

大企業はシステム部門やベンダーに任せてAIツールを導入できますが、地方の中小企業にそのリソースはありません。だからこそ、経営者や現場スタッフが自分でAIを動かす力を持つことが競争力に直結します。

今回紹介したAIエージェント自作のアプローチは、初期費用ほぼゼロ・月額数百円のAPIコストで実現できます。週に数時間かかっていたデータ集計やレポート作成が自動化されれば、その時間を本来の経営判断や顧客対応に使えます。

「AIは難しい」「自分には無理」という思い込みを、この記事が少しでも崩すきっかけになれば幸いです。次回は、今回構築したエージェントにさらにSlack通知機能を追加した拡張版について書く予定です。