徳島県は「サテライトオフィス発祥の地」と呼ばれています。2023年8月時点で20市町村・104社のIT企業やスタートアップが徳島に拠点を構えました。総務省の調査では全国トップクラスの誘致実績です。
でも、同じ時期の地元中小企業のDX取り組み率は18.5%。
同じ徳島に、AIを当たり前に使うIT企業と、まだデジタル化に踏み出せていない中小企業が共存しています。この温度差は、何を意味しているのでしょうか。
徳島がサテライトオフィスで全国トップになった背景
徳島県は2010年代から「とくしまサテライトオフィスプロジェクト」を展開し、全国屈指の光ブロードバンド整備と手厚い補助制度で企業誘致を進めてきました。美波町や三好市など、人口減少が進む地域にIT企業を呼び込むことで、地域活性化と雇用創出を狙うモデルです。
結果として104社という数字は、地方都市としては異例の実績です。東京・大阪のIT企業が「徳島で働く」という選択肢を現実のものにしました。
移住してきたIT企業の多くは、AIやクラウドを当たり前に活用しています。生成AIを使った業務自動化、データドリブンな意思決定、リモートでのチーム運営。これらは都市部のIT業界では標準装備になりつつある話です。
一方で、地元中小企業のDX取り組み率は18.5%
中小企業基盤整備機構の2024年調査によると、DXに取り組んでいる中小企業は全国で18.5%。「取り組みを検討している」を加えても42%にとどまります。
徳島の主要産業は製造・農業・食品加工・建設・小売です。これらは生成AIの導入率が特に低い業種群です。「ChatGPTで文章を直す」程度の活用すら、まだ一般的ではない経営者も多い。
DXが進まない最大の理由として挙げられるのが「IT人材が足りない」(25.4%)と「DX推進人材が足りない」(24.8%)です。皮肉なことに、そのIT人材は徳島に104社分、すでにいます。ただ、地元企業とつながっていない。
なぜ104社いるのに、つながらないのか
サテライトオフィスの多くは「東京の会社が徳島で働いている」状態です。クライアントも本社機能も東京にある。徳島にいるのは、働く場所を変えた社員たちです。
地元の中小企業と接点を持つ機会は、意外と少ない。業界も違う、取引も発生しない、接触する場がない。お互いが「徳島にいる」という事実だけで、同じ経済圏にいるわけではありません。
四国経済連合会の報告書でも、サテライトオフィス・ワーケーションが地域を変える可能性がある一方、地域との連携が課題と指摘されています。IT人材と地元産業の橋渡しが、まだできていないのです。
この温度差は、ビジネスチャンスでもある
悲観的に捉えると「徳島は連携できていない」という話になります。でも別の見方もあります。
IT企業が104社いて、地元企業のDXニーズがある。この2つをつなぐ人間が、まだほとんどいない。
東京であれば、IT企業とDX支援の需要は過飽和状態です。コンサル会社も、AIベンダーも、フリーランスのエンジニアも、無数に存在します。でも徳島で「AI駆動経営を地元企業に伝える人」は、まだほぼいません。
徳島県も「とくしま新未来DX推進プラン」でDX加速を掲げていますが、政策だけでは経営者一人ひとりの意識は変わりません。現場で伝え続ける人間が必要です。
このブログを書いている理由の一つも、そこにあります。数字や政策ではなく、経営者の言葉でAI活用を伝えていくこと。徳島の104社と地元企業の温度差を、少しずつ縮めていくこと。
参考:とくしまサテライトオフィスプロジェクト/中小企業のDX推進に関する調査(2024年・中小企業基盤整備機構)/とくしま新未来DX推進プラン(徳島県)