「地方CAIO」という言葉を、あなたはご存知ですか?

CAIO(Chief AI Officer)という役職名が、大企業を中心に急速に広まっています。日本語に訳せば「最高AI活用責任者」。経営戦略の中核にAI活用を据え、組織全体のデジタル変革を牽引するポジションです。

しかし、この動きはまだ都市部の大企業に限った話です。徳島をはじめとする地方の中小企業では、そもそも「AIを誰が担当するのか」すら決まっていないケースがほとんどではないでしょうか。

そこで本記事が提唱したいのが、「地方CAIO」という生き方です。大企業のような専任役員ではなく、地域に根ざしながら複数の中小企業のAI活用を横断的に支援する専門家——そういう存在が、今まさに地方で必要とされています。

地方中小企業のAI活用が遅れている現実

まず現状を数字で確認しましょう。総務省が公表した令和6年版 情報通信白書によれば、AIを業務で活用している企業の割合は、大企業が約46%であるのに対し、中小企業は約20%にとどまっています。規模の差だけでなく、地域間格差も顕著です。

さらに中小企業庁の調査では、DX推進の最大の障壁として「人材不足」を挙げた中小企業が全体の60%以上に達しています(中小企業白書2024年版)。つまり、ツールやお金の問題以前に、「AIを理解して動かせる人がいない」という根本的な課題が地方中小企業を苦しめているのです。

徳島県は全国的に見ても高齢化・人口減少が進む地域であり、若手IT人材の都市流出が続いています。こうした構造的課題を前に、「AIは大企業のもの」という固定観念が地方経営者の間に根強く残っているのが実態です。

なぜ今、地方CAIOが求められるのか

経営者はAIを「使いたい」が「使えない」

私が金融機関の立場から徳島の中小企業経営者と日々接する中で感じるのは、「AIへの関心は高いが、何から始めればいいかわからない」という声の多さです。ChatGPTの名前は知っていても、それを自社の業務にどう組み込むかのイメージが持てない。そういった経営者が圧倒的多数を占めています。

この「関心はあるが行動できない」ギャップを埋める存在こそが、地方CAIOです。経営者に寄り添い、業務の実態を理解した上で「この業務ならAIでこう改善できる」と具体的に提案できる人材——それは都市部から派遣されるコンサルタントではなく、地域に根ざした人間でなければ務まりません。

「翻訳者」としての役割が鍵を握る

地方CAIOに求められるのは、最先端のAI技術を開発する能力ではありません。むしろ重要なのは、技術と経営の間に立つ「翻訳者」としての能力です。

  • AIツールの仕組みをわかりやすく経営者に説明できる
  • 現場スタッフがAIを拒否感なく使えるよう導入設計ができる
  • 費用対効果を経営数値で示すことができる
  • 自社だけでなく地域全体のAIリテラシー底上げに貢献できる

金融・会計・マーケティングなど経営に近い業種の出身者ほど、こうした翻訳能力を発揮しやすいと言えます。技術的な深さよりも、経営課題を起点にAIを活用する視点が求められているからです。

地方CAIOの具体的な仕事像

複数社の「AI顧問」として横断的に動く

都市部のCAIOが一社に専任するのとは異なり、地方CAIOは複数の中小企業を掛け持ちする「AI顧問」モデルが現実的です。月に数回の訪問・オンライン相談を組み合わせながら、各社のAI活用ロードマップを策定・実行支援します。

実際、経済産業省が推進するDX推進政策においても、中小企業向けの「伴走型支援」モデルの有効性が強調されており、単発のコンサルティングではなく継続的な関与が成果を生むことが示されています。

徳島ならではの産業・課題に精通していることが強み

農業・水産業・製造業・観光業——徳島の産業構造は都市部とは大きく異なります。地方CAIOの強みは、こうした地域固有の業種・商慣習・課題を肌感覚で理解していることです。

例えば、農業経営者に対してAI需要予測や気象データ連携を提案する際、その経営者が毎年どんな悩みを抱え、どんな言葉で課題を語るかを知っていることは、外部コンサルタントには決して真似できないアドバンテージです。

副業・兼業での参入が現実的な入り口

地方CAIOは最初からフルタイムの専業である必要はありません。金融機関・士業・経営支援機関に勤める人材が、副業・兼業として地域企業のAI活用支援に携わるモデルは、すでに一部の先進的な地域で始まっています。

本業で培った経営・財務・業務改善のノウハウと、自ら習得したAI活用スキルを掛け合わせることで、「AI×業界専門性」という希少な価値が生まれます。これが地方CAIOとしての差別化ポイントになります。

地方CAIOになるために今日からできること

では、地方CAIOを目指すためには何から始めればよいのでしょうか。以下に実践的なステップを示します。

  • まず自分がAIを使い倒す:ChatGPT・Copilot・Claudeなどの生成AIを日常業務に積極的に取り入れ、「何ができて何ができないか」を体感する
  • 業務改善の成功事例を自分で作る:自社や身近な企業で小さなAI活用の成功体験を積み、具体的な数値(時間短縮・コスト削減など)で語れるようにする
  • 経営者との対話を増やす:地域の経営者と積極的に交流し、どんな課題を抱えているかを聞き続ける。課題理解こそが地方CAIOの核心
  • 発信を始める:ブログ・SNS・勉強会登壇など形は何でも構いません。「この人はAIに詳しい」という認知が地域内で広がることが、仕事につながる最短経路です

地方こそ、AIの専門家が輝ける場所

都市部では今やAIコンサルタント・AIエンジニアが溢れ、競争は激化の一途をたどっています。一方で地方では、AIを経営に活かせる専門家の絶対数が圧倒的に不足しています。

これは裏を返せば、地方こそブルーオーシャンだということです。徳島に限らず、地方の中小企業経営者は「信頼できる地元のAI専門家」を求めています。東京から来る高額なコンサルタントではなく、自分たちの事業を理解してくれる、顔の見える存在を。

地方CAIOという生き方は、単なるビジネスモデルの話ではありません。地域経済を支える中小企業が生産性を高め、後継者問題や人手不足という構造課題を乗り越えるための、社会的な使命でもあると私は考えています。

AIという技術が急速に民主化されている今だからこそ、地方から発信するAI活用の専門家が生まれる時代が来ています。徳島から、その動きを一緒に作っていきましょう。